
神秘的で、孤独。そして、美しい
2019年5月27日にMVが公開となった米津玄師の新作「海の幽霊」。
2日後の5月29日現在で509万回再生を超えるあたり、「日本を代表するアーティスト」にふさわしい勢いを維持していますね。
すでに多くの人の耳に届いている「海の幽霊」。ダイナミックでありつつ、繊細で折れてしまいそうな「か弱さ」を感じたのは私だけでしょうか?
海の幽霊
すでにYoutubeのコメント欄やツイッターでは多くの反響を呼んでいる「海の幽霊」ですが、個人的に思うところをもっと深いところまで掘り下げていきたいと思います!
➀「楽器としての声」から「聴かせる声」へ
思えば2018年末の紅白。米津玄師が紅白に出場するかどうか、注目が集まりました。
米津が一切生演奏をテレビで演奏しないスタンスだったことから、「テレビ嫌い説」やら「病気説」やらあらゆる憶測が飛び交いました。
その中に、「歌唱力不安説」ってのがありました。
もともとボーカロイドに自作の曲を唄わせていた米津は、言ってしまえば「トラックメーカー」出身。
歌わなくてもいいところから徐々に世間に認知されていった彼の経歴から考えてみても、確かに考えられる理由ではありました。
ワンダーランドと羊の歌
まー、結局は素晴らしいパフォーマンスで「米津ってすげーっ!」となったわけですが。
それで発表されたこの「海の幽霊」ですよ。なんて歌唱力ですか。
もともとは聞かせるタイプの声ではなかったはずの米津玄師。これは「歌が下手」と言いたいのではありません。これまでの彼の曲の主役はあくまで曲そのものであり、声はあくまで曲の一部であるという曲が明らかに多かったのです。
ポッピンアパシー
声と曲が一体になっている感覚、分かりますかね?
米津っぽいキテレツなメロディーと語感多めの歌詞は初期の作品に多い特徴です。一方の「海の幽霊」はどうでしょう?「聴かせる」声に変わっていませんか?
曲の旋律がどうこうというよりは、圧倒的なボーカルとエフェクトの効いたコーラスが主役です。あくまでピアノやストリングスは声を引き立たせるための脇役に徹しています。
そういう意味では、米津の歌唱力不安説を一蹴する作品であり、「やっぱり米津って唄うまいわ」って思わせる作品であると言えます。
➁「Lemon→Flamingo」から始まった米津の挑戦
そして、もう一つ大切なこと。それは、彼が自分の作品を突き詰めるアーティストであるということです。
考えてみれば、Lemonが爆発的ヒットという言葉すらチープなくらい世間で受け入れられたわけです。
Lemon
彼の曲を辿っていくと、Lemonのようにメロディアスなナンバーはそんなに多いわけではありません。(年々、増えてきていることは間違いないですが)
つまりLeomonはあくまで米津玄師の一面を写しただけの曲ということになります。しかし、もし売れることを重視したいのであれば、Lemon系の曲を作りまくる方向にシフトすればよかったわけです。
しかし、そんな米津玄師が次に発表した曲は「Flamingo」でした。
Flamingo
サビこそ口ずさみたくなるような曲ですが、演歌ともヒップホップともとれるような歌い方やサウンドは、一般的なポップソングとは程遠い作品でした。
それまでLemonを聞いて「米津玄師って聞きやすくていいよね~!」なんて言っていた層を、一気に置き去りにする曲を発表したわけです。純粋に、こりゃすごいなと思いました。
彼は自分の作品を出したい「アーティスト」であるということを、強く感じました。
➂「海の幽霊」で挑戦した洗練さ
そして本題の「海の幽霊」ですが、この曲はこれまでの米津の作品にはあまりなかった
「単音の強さ」を感じた曲でした。その中にある、研ぎ澄まされている美しさと儚さ、強さと弱さが強烈なインパクトを与えてくれます。
海の幽霊
間奏も水中を想起させるような、幻想的な音が広がります。たぶん、あのコーラスの主は「海の動物たち」で、その一つ一つの声が私たちに何かメッセージを送っているように感じます。
しかし、この「海の幽霊」は聞きやすい曲かというと、そうでもないですよね。Flamingoを発表した時のように、常に新しい分野に挑戦し続ける彼の姿勢には感動すら覚えます。
ちなみに今回の作品でピアノを担当しているのは知る人ぞ知る名ピアノマン。元東京事変、現在はthe HIATUSでキーボードを担当しているわっちこと伊沢一葉です。
米津玄師 MV「海の幽霊」 https://t.co/uIY9V2kC42 @YouTubeより
ピ、ピアノ ひ、弾きました (´・_・`)
— 一葉 no idea (@appa1247) 2019年5月29日
「海の幽霊」のまとめ!
さて、いかがでしたか?
ちなみに冒頭で5月29日現在509万回再生と申し上げましたが、4時間後、改めて再生数を確認したら561万回を超えていました。この4時間で60万回もリスナーの耳に届いたということになります。
彼の存在がいかに今の音楽シーンにおいて重要か、改めて実感しました。ちなみに彼は「ゆうれい」というタイトルを使った曲を他にも発表しています。
ゴーゴー幽霊船
彼が描く「ゆうれい」たちについても深堀りしてみたいなーと思いました。気が向いたらまた書いていきたいと思います!
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました!